5月30日。日曜日の朝。ダルース行きのバスの出発は午前8時すぎでした。座席の3分の2ぐらいの乗客を乗せ、途中いくつかの停留所に止まりながら、高速道路を飛ぶように走りました。

 しばらくして、近くに座った、ブルガリアから来たという留学生の女の子二人組が声をかけてくれました。一人で寂しそうにみえたのでしょうか。

 会話の内容や、彼女たちが何を学びにきていたのか、今では忘れてしまいましたが、遠い異国から来たもの同士、お互いになれない英語でジェスチャーを交えながらの会話が、とても楽しかったのを覚えています。

 彼女たちはダルースまでいかず、途中で降りていきました。

 その間際、プレゼントだと言って、民芸調の彫刻を施した人差し指ぐらいの大きさの、木製のケースをくれました。

 「この香りを嗅ぐと、どんな女の子も恋に落ちるのよ」。

 おかしかったのは、二人は本当にそう信じているといった様子で、顔が真剣そのものだったことでした。

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