第2章 1888-1900 ゆりかごの時代

第8回 ジョン・ハイド

 協会の設備は、部屋に見合った小さなテーブルが1つと、今にもこわれそうなイスが2脚だけ。他にあるものといえば、散らかった帳簿や資料と、新聞雑誌売り場から返品された『ナショナル ジオグラフィック』の山――。

 そうそう、ひとつ忘れていました。協会本部には金庫もありました。しかし、中は当然空っぽ。それどころか2000ドル近い借金がありました。グロブナーの月給が100ドルでしたから、彼の年収をゆうに超える金額です。

 状況は十分に絶望的です。

 私の体験談で恐縮ですが、これは以前、どこかで見たような光景……倒産寸前の出版社です! ベルの支援がなかったら、ナショナル ジオグラフィック協会はとっくに潰れていたでしょうね。

 いちばん話が違っていたのはグロブナーの立場でした。ポストはベルが提案した編集局長ではなく、編集長補佐。任期も3カ月の試用期間ののちに、編集委員会が了承すれば、雇用を延長するという契約です。

   彼が就職して間もなく、グラハム・ベルはグロブナーにこんな手紙を送っています。