第2話  JAMSTECへの道 前編

その3  国際ワークショップで撃沈

研究を始めて1年ちょいのボクの中に、「日本のこの研究分野をしょって立つのはやはり、ボクしかいないな」という感情が湧き上がってきた。なんて「ナマイキで身の程知らずな若造よ!」と思う。でも、ボクはホントーにそう思ったんだ。

しかし、講演の合間のコーヒーブレイクや講演終了後の懇親会では、そんなボクのナマイキな思い上がりは木っ端みじんに打ち砕かれた。ジョン・バロスに「留学が・・・したいです・・・バロス先生!」と言うのが精一杯。「キミは独身か?」という質問も聞き取れず、アワアワするだけ。

ジョン・バロスに露骨に「メンドーくさそうなヤツやのー」と思われたのだけは、機敏に感じ取ることができてしまった。カール・シュッテッターには、話しかけようと「アノ、アノ、アノ」と言っているうちに手でヒラヒラされて、「アッチ行け」と追い払われるシマツ。

同行したパメラさんはさすがラテンのノリを発揮して、キャピキャピ可愛い娘ブリッ子全開で大物研究者に顔と名前は売っているわ、東京大学の大学院生も先生に紹介されてしっかり自己紹介しているわ、でボクだけ完全に懇親会ハブ状態。海外のパーティーにおける典型的ダメダメ日本男児ぶりを猛烈に発揮していたのだ。
さらにダメなことに、「ボクはなんてダメなヤツだ」と急激に落ち込んで負のデフレスパイラルに陥ってしまっていた(ちなみにこの部分は、いまでもダメダメッぷりはさして直っていない)。

「日本をしょって立つ」と意気込んだわりには、可及的速やかに自分のダメさを認識してしまったボクは、現実逃避のタバコを吸うためにフラフラとした足取りでJAMSTECの岸壁の方に歩いていった。長い貧乏旅行の疲れと暑さと睡眠不足にやられた体、興奮と落ち込みでもはや何がなんだか分からなくなった頭。

そんなボクの前に、夕暮れの薄ら明かりと夜の闇が入り混じった静かな東京湾の海と、キラキラ光る湾岸の工場や街の明かりが重なった光景があった。とても美しい、印象的な光景だった。JAMSTECの岸壁には、昼間の暴走的な暑さの和らいだ磯の香りを含んだ涼しい風が流れていた。