第3章 冒険家の食欲 後編

(承前)
 先に挙げておいた『植村直己の冒険学校』という本のなかで、植村は冒険のときに口にしたさまざまな食べ物について語っているが、こんな一節がある。

《……獲りたてのアザラシの肝臓はうまいとか、同じく肝臓の解凍しかかったのはアイスクリーム以上の味とか、心臓を煮たものとか、脳味噌の独特の味とか、生肉といってもじつにいろいろな種類の肉と食べる部分があって、味に変化があるんです。》

《肉は火を通したり、調理しますと、やっぱりそのものの味はなくなってしまいます。
 旅をしているときは、一日1キロ近くの肉を食べていましたけれど、これも、クジラやアザラシの皮下脂肪をちょっとつけて、独特の味をつけて食べると、たくさんお腹に入ってエネルギーがでるわけです。》

 この脂肪をちょっとつけて生肉をよりおいしく食べる方法も、エスキモーのやり方にならったものだった。

 先に書いたように、植村が犬橇旅行で多く用いたのは、まずアザラシで、ついで自分で釣りあげたオヒョウであった。しかし『冒険学校』では、さまざまな動物や鳥類を食べた体験が語られていて、なかなか興味深い。次にその一部を紹介しよう。