相変わらず、ニーナとシンコーは、呆れていた。

 二頭はこれから、人間と共に生きていかなければならないのだから、人間というものを知らなければならないし、人間社会に馴染まなくてはならない。

 自分の立場を知り、共に仲良く生きていく方法を身につける必要があるのだ。
 それを教えることとなったのが、不肖ながら、この私なのである……。

 私には、馬の師匠が何人かいる。
 ニュージーランドに来る前に、カナダの牧場で働いていた時に師事したカウボーイのアルバートと、調教師のアレックス、厩務員のリカルドである。

 三人とも、共通して言った言葉があるのだが、それは、

「馬を育てるのも、人間を育てるのも、基本的には、何も変わらない」

「必要なのは、常識である」

「でも、その常識を持っていない人間が非常に多い。良い馬を育てたいなら、人間である自分も磨かなければならないよ」

 彼らは常に、「馬と向き合う時は、君も試されていることを忘れるな」と言った。自分をしっかりと持っていない者に、馬は、ついていかないのだ。

 人と馬は、いい関係を持つことができる。しかし、馬と関わる人間が、短気を起こして怒鳴ったり、暴力を振るったり、無責任で怠慢な世話をしたりしては、馬も、心を閉ざしてしまって、言うことを聞かなくなるのだ。

 その昔、馬の調教は、馬を木に縛り付けて、徹底的に殴って、とことん降参させたという。

 今の時代、そんなことは人道的ではないし、暴力をもって言うことをきかせなくても、愛情のある関係づくりをしっかりとすれば、馬は、人間のためにちゃんと動いてくれる。

 一番大切なのは、人と馬が、共に幸せであることである。
 そのためにも、共に、上手く付き合っていく方法を知らなければならない。

 では、先に戻ると、タイトルは――、
『人と馬との付き合い方講習』というのが良いだろう。私も、一緒に学んでいくことにしよう。

 ということで、講習会を開催いたします。まずは、乾杯の音頭を。

 いやはや、こういうことは最初が肝心なのである。

 ちなみに、スピーチもさせていただきますと――、
「三つ子の魂百までという言葉がありますが~、子馬たちも、今が大切な時期でございまして~、我が牧場のモットーであります~(長いので省略)」

 それでは、人と馬との付き合い方講習、その①、「まずは、人間を知ろう」

この連載の前回の
記事を見る

この連載の次の
記事を見る