第2回 「星のたまご」はどこに? 星々の生と死をみつめて

 最初の大がかりな修理を終えたハッブル宇宙望遠鏡は、打ち上げ直後の「ピンぼけ」の汚名を返上し、めざましい活躍を始めました。

 鮮明な画像が得られるようになったのは、すばらしいことでしたが、成果はそれだけではありません。大気の妨げを受けない宇宙望遠鏡ならではの強みを生かし、それまで地上では観測できなかった、暗い星たちのかすかな光を分析し、かつては見ることすらかなわなかった星の誕生と死のドラマを、次々に明らかにしていったのです。

 たとえば、天文学者がよく用いる有名な図のひとつに、HR図(ヘルツシュプルング‐ラッセル図)というものがあります。これは横軸に恒星のスペクトル型(言い換えれば表面温度)、縦軸に絶対等級(本来の明るさ)をとったグラフです。

HR図(ヘルツシュプルング‐ラッセル図)の例。恒星のスペクトル型を横軸、絶対等級を縦軸にとると、ほとんどの恒星が左上から右下に向かう線上に分布し、この並びを主系列という。
(Richard Powell)

 星たちを観測してこの図にプロットすると、一部の例外を除いて、左上から右下に向かって、ほぼ直線上に並びます。この並びを主系列と呼んでいます。地上の望遠鏡ではそれまで、右下の暗くかすかな星たちについては、あまり多くのデータを得られずにいました。

 ところが、ハッブル宇宙望遠鏡による散開星団や球状星団の観測を通じて、暗い星たちについて得られる情報が飛躍的に増えたのです。その結果、こうした星々が主系列に沿って、さらに図の右下方向へ分布していることが明らかになりました。

 1994年、アメリカ天文学会の宇宙望遠鏡セッション(前回お伝えした、ハッブルの最初の修理直後の会合)で拍手喝采に包まれた発表データは、それまでの地上で得られたHR図の上に重ねて示された、ハッブル宇宙望遠鏡によって新たに加えられた星々のものでした。

 ハッブル宇宙望遠鏡はこのように、星の誕生から死までのあらゆるステージにおいて、さまざまな発見を成し遂げていきました。

 中でも、あまりにも鮮明な画像によって、強烈な印象を残したのが、わし星雲の中心部にある暗黒星雲のクローズアップでしょう。

わし星雲の拡大画像。
(NASA,ESA, and The Hubble Heritage Team (STScI/AURA))