神戸 にぎわいの街で

2011.07.29
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- AUGUST 2011 -

ナショナル ジオグラフィック協会 写真資料室から

神戸 にぎわいの街で

 おびただしい旗や幟(のぼり)がはためく通りを、夏着姿の人々が行き交う。ここは、神戸市兵庫区の新開地。1910年代に撮影された写真だ。  新開地は明治末から戦前まで神戸随一の歓楽街だった。川を埋め立てた全長900メートルほどの通りに、劇場や映画館、寄席が20軒近くも建ち並び、連日、娯楽を求めて多くの人が詰め掛けたという。

 「夜の八時ごろともなれば新開地の通りは、文字どおり押すな押すなの盛況で、歩くにしても一寸刻みにしか歩けなかった」。そう書き残したのは、少年時代、近所に住んでいた作家の横溝正史(『横溝正史自伝的随筆集』)。ちょうど、この写真が撮られたころだ。

 横溝より7歳年下で、映画評論家の淀川長治はこの街の生まれ。映画館に足繁く通い、銀幕から多くを学んだ。「『新開地』が私のじっさいの幼稚園、小学校、中学校といえるくらいに、ここでほんものの人間教育を受けることになったのである」(『淀川長治自伝』)。

写真: FREDERIKA BROEDER(MRS. W. P. BROEDER)

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