そして約束の1週間後、再び左子先生に会いにいったボクは、晴れやかな表情で、「超好熱菌の研究をします。生命の起源を解き明かしたいと思います。よろしくお願いします」と言った。左子先生はとても嬉しそうだった。

そして、研究テーマも決まったし、留学先を決めようかと言う話になり、左子先生が3つくらいの研究者を推薦してくれた。そのなかにアメリカのシアトルにあるワシントン大学海洋学部のジョン・バロスという名があった・・・・・・。

超好熱菌の不思議な魅力

1年とすこし経った1992年初夏、ボクはいっぱしの「超好熱菌」研究者気取りの修士1年生だった。やると決めた「超好熱菌」の研究は、実際のところ、生命の起源の謎など遙か宇宙空間の先にあるような遠い繋がりでしかない研究だったが、毎日とてもエキサイティングだった。

ボクは長崎県島原半島、雲仙普賢岳の西に位置する小浜温泉の沖にある水深の浅い海底温泉をメインフィールドに、誰も見つけたことないような超好熱菌の培養に取り組んでいた。それともう一つ、超好熱菌のタンパク質の熱安定性について研究を進めていた。

(解説始まり)
沸騰するお湯のなかで卵を10分ぐらい置いておくと、見事なまでのハードボイルド卵になるのは皆さんご存じだと思います。あれは卵のタンパク質が熱で変成するから固くなるわけです。鶏はボクらと同じ気温のなかで生きている動物なので、鶏の体やその卵のタンパク質は通常生活している温度=常温(20-40℃)で適正なプルンプルンしたカタチを保ってちゃんと働くようにできています。しかし、100℃のお湯では、高温のせいでプルンプルンしたカタチが壊れてグシャグシャと縮こまって、カッチカッチのゆで卵になるわけですね。

これが普通の生物のタンパク質のバアイ。
ところが超好熱菌というのは、80℃以上の高温で、一番活発に活動する微生物であり、なかには100℃を超えないと「チョー寒いから寝る」とピクリとも活動しない菌までいるんです。こういう菌のタンパク質は当然、100℃以上でないとカチカチに凍ったような状態です。だから、超好熱菌の細胞はほぼすべて、やたら高温に強いタンパク質でできているんですね。

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