「タカイ君、よう聞きや。博士課程までの研究というのは人生を賭けるテーマとちゃうんやで。研究のライフテーマというのを探す能力や知識、研究に対する世界観を養う期間なんや。そやから、今選ぶ研究テーマをこれから先ずっとやるわけではないんやから、いろんな事を学ぶことのできる学際性というのが重要なんとちゃうかな」

聞くからに苦し紛れの「言い訳」っぽかったが、ボクはちょっぴり心動かされた。まるで「言い訳」っぽかったけど、まったくその通りだと思った。それに水産微生物学研究室のエース、左子先生にそこまで目を掛けてもらっているという話を聞いて、ボクは単純に嬉しかったのだ。

それでもやはり、毒ウイルスや毒遺伝子のテーマは捨て難いものがあった。それまでも、その後も、あんまり人生に悩んだことのないボクだが、ちょっと悩んだ。その晩、森直樹という友人(現在、大阪府立大学工学研究科知能情報工学分野准教授)に相談してみた。

そうすると、数学・物理・情報系の森はあっさり結論を出した。
「そら、超好熱菌の方がおもしろいやろ。オレやったら超好熱菌の研究選ぶわー。生命の起源の方が絶対おもしろいやん。なんか分子生物学って体の分子を全部調べたら生命現象が説明できるという指向っぽいけど、それで生命現象を理解できるとはとてもオレは思わんけどね」

ボクは分子生物学をバカにされてムッとしたが、かなり視界が開けた気がした。持つべきものは友よ!そしてなんと頭のいい友よ!森の言うことは、ある意味、今のボクが言いたいことそのままだな。うむ、確かに。ロマンで考えたら、絶対、分子生物学より生命の起源の方がスケールでかいわ。

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