第9話 アニマルキッズと羊の勉強

 さて次は、ケイティー。

 生意気盛りで、反抗期真っ只中。かっこよく煙草をふかし、かっこよくお酒を飲み、キマッたオシャレをすることが、今の彼女の関心事という十五歳。

 まあまあ、こういう時期は、はしかのようなもので、一度は、青少年の通る道なのかもしれないが、母親代わりのスージーにとっては、現在直撃中の台風のようなものだ。

 スクールバスの運転手と口げんかをして以来、バスに乗せてもらえなくなって、学校に行きたいけれど足がないという、不本意ながらの不登校生。

 学校に行けない時間は、家で鏡を見ながらオシャレ研究に専念しているが、私がこの牧場に来たことで、毎朝、彼女を市内バスに乗れるところまで車で送ることになった。

 ちなみに、スージーやげじげじ髭のボスは、朝早くから馬を搬送車に乗せて、馬の調教に出掛けてしまうので、朝食は子供たちだけで食べて、スクールバスに飛び乗るという生活である。

 最年少のジョシュ、十三歳は、先生を困らせる常習犯。

「どうして、円周率の小数点以下の数字は、無限なの?」
「無限って、どういうこと?」
「どうして、生き物は、酸素を吸うの?」
「酸素だって、昔は毒だったでしょう?」
「どうして? どうして?」

 という“どうしてっ子”なのであるが、ここで終わればカワイイ。将来は学者になるかもと、思うのだけれど……、その先が、問題なのである。

「あ~、先生も分からないんだ~。みんな~、先生も、分からないんだって~。分からなくても、先生になれるんだ~」と、調子に乗ってしまう。

 結局、クラスから追い出されて、保護者呼び出し電話が何度もかかってきた。
 その都度スージーが、怒りをこらえて謝りに行ったものの、「この子は、別の学校へ……」などと言われ、現在、転校申請中であった。

 まだまだいるのだ。時々、家にこっそりと帰って来るという、勘当中のキーンツ、十八歳。
 どうしようもない無職のぷーたろーで、自活に目覚めさせるために、家から追い出したのだという。

「彼が家に来たら、家中に鍵をかけてね」と、スージーから念を押された。

 これだけ聞くと、私は逆に笑ってしまった。

「はっはっはっは! 面白い!」

 この子たちは、どんな風に私を困らせてくれるのか、楽しみでもある。実は、問題児自慢なら、私も負けないのだ。くっくっくっく。

 スージーにも、マオリ族の男性との間に生まれた十三歳の一人娘がいた。翡翠のような目をしていることから、ジェイドという名前で、素直で明るい子だった。

 なぜ、ビルの子供たちが、なんだかオカシナことになっているかというと、子供たちは、早くに母親を亡くしてしまっていたからだった。
 病に伏し、最期を看取らなければならなかった子供たちの悲しみは、相当に深いものだったという。