日本人が作った森 「明治神宮」 後編

 戦後の復興期に旺盛な木材需要を満たすため、国は建材となるスギやヒノキを大量に植える政策を取った。だが国産材の需要が低迷した1970年代以降、山の整備が行き届かず、今、多くの森林が荒廃の危機に直面している。

 「神宮の森では自然林に近い森をつくるため350 種を超える樹種が植えられ、適者生存のやり方が取られました。このため森林生態学的に見れば、様々な樹種が混生する奇妙な森ともいえます。ほぼ100 年を経て、天然林相に近づきつつあるのは確かですが、本当にそうなるかどうかは、千年、万年という単位で見なければ分からない。その意味で、この森は興味の尽きない、見守っていきたい森の一つです」

 大正初期の日本人が、当時の英知を結集してつくり上げようとした「永遠の森」。そこにあるのは、森づくりへの明確なビジョンと、100年先を見据えた壮大なグランドデザインだ。本多博士をはじめとする主導者たちの情熱が、日本全国から賛同の声を呼び起こし、まさに国民運動となっていったのである。その姿に現代の私たちが学ぶべきことは多い。

 「明治神宮の森は、関東大震災や戦災をも乗り越えて、今の姿があるのです。日本人は古来、森を守り、また森に守られて暮らしてきました。森を後世に伝えたいという思いは、この国に住むすべての人の祈りなのかもしれません」――沖沢さんは最後に、こう言葉をつむいだ。