そして、高齢化の進捗で新たな問題が生まれたように、森林にも解決すべき問題があると、白石教授は指摘する。「正確に言うと――」と、白石教授は続ける。

「問題は森林にあるというより、林業のほうにあるのです」

 日本には森林蓄積が十分にある。将来へ向けて、これを適切に管理していくのが林業の仕事だ。しかし、その担い手となる林業従事者の数の落ち込みが、近年あまりにも激しい。

 林業の就業人口は1970年以降、5年間に約2万人のペースで減っているという報告がある。2005年の数字で、林業従事者は約4万7000人。しかもその内訳を見ると、26%つまり4分の1以上が65歳以上の高齢労働者となっている。全産業の平均は9%だから、林業従事者の高齢化率がいかに突出しているかが分かる。

 労働災害の発生率も深刻だ。1年間に発生する労働災害による死傷者数(労働者1000人当たり、休業4日以上の傷病が対象)は、1990年が30.2人、2008年が29.9人。全産業平均の発生率が1990年に4.6人、2008年には2.3人まで減少しているのに比べて、あまりに高い数字だ。

 しかも、ほかの産業は、ほぼ20年間で、建設業(11.3→5.3)、製造(6.6→3.0)、木材・木製品製造業(17.4→8.3)が半減ペース、発生率が比較的高いといわれる鉱業(22.6→14.0)でも4割ほど減少しているのに、林業だけが全産業平均より10倍以上の水準で高止まりしている。労働安全への取り組みは林業では急務なのだ。

 危険と隣り合わせでありながら、林業従事者の賃金は他産業に比べて低い。林業従事者の収入は日給ベースが多く、1日1万2000円程度という。年間200日働いたとして、年収は250万円ほど。熟練したからといってもなかなか増収は見込めない。「危険な作業なのに低賃金という現状を変えない限り、林業従事者の減少を食い止めるのは難しいでしょう」というのが白石教授の認識だ。

林業就業者数と高齢化率の推移
日本の林業就業者数は1970年以降、5年間に約2万人のペースで減っている。2005年の数字で約4万7000人。しかもその4分の1以上が65歳以上の高齢労働者となっている。
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