世界中の天文学者の期待を乗せて、1990年、スペースシャトル・ディスカバリー号が打ち上げられました。その荷物室に搭載されていたのが、ハッブル宇宙望遠鏡です。

 全長13.1メートル、直径4.25メートルの円筒形の人工衛星の中に、口径2.4メートルの天体望遠鏡が納められています。人類史上、例を見ない大型の天体望遠鏡が、初めて宇宙へ運ばれた歴史的瞬間です。

1990年4月24日、スペースシャトル・ディスカバリー打ち上げ。チャレンジャーの爆発事故による計画凍結から4年の時を経て、ついにハッブル宇宙望遠鏡が宇宙へと旅立つ日が訪れた。(NASA)

 地上における天体望遠鏡の限界は、大気という邪魔者の存在でした。

 大気ごしにかなたの星々を望むのは、たとえて言えば、川の底から空を眺めるようなものです。ゆらぐ水の流れによって、遠くにある天体が鮮明に見えず、その画像がぼけてしまうのです。天体望遠鏡が地上にあるかぎり、どんなにレンズや鏡を大きくしても、大気のゆらぎの影響を避けることはできません。

 地上から見上げる夜空の星々は、きらきらと瞬き、とても美しく見えます。これは大気があるおかげなのですが、逆に言えば、大気の揺らぎや風が、星の光を微妙に屈折させて、ゆがめてしまっていることに他なりません。
 そのため、大気のない宇宙に望遠鏡を打ち上げて、そこから観測をすることで、宇宙のさまざまな天体の鮮明な画像を得たいという願いは、天文学者の長年の夢となっていたのです。

この連載の次の
記事を見る