「最初は、やっぱり調査しなきゃ、データをとらなきゃっていう頭でっかちな調査者の発想でいたので、これはいけない、と。森のキャンプとかでプラプラしながら子ども達と一緒に戯れてると、むこうからいろいろ言ってくるんですね。魚が捕れたとか、カニが捕れたとか。そういうものの実物を見ながら、言葉を教えてもらったりして。そっちのほうがよっぽど身につきました。プライドを持っているとダメですね。自分は森も歩けないし、猟もできない。だから、教えてもらうんだ、と。謙虚な姿勢で入っていくと、相手の集落に負担をかけてるんだけど大目に見てもらえたり、手ほどきしてくれる──」

 というわけで、「弟子入り」に秘訣などなく、まず先に弟子入りしてしまうにかぎる、ということらしい。

 もっとも、亀井さんには武器があった。本人としては最初は自覚がなかったそうなのだが、後になってみると非常に有効だった手段。

 それは、スケッチだ。

スケッチのおかげで、子どもたちとの距離が一気に縮まった。(写真クリックで拡大)

「湿気でカメラが壊れてしまったんですよ。首都までカメラを買いに行こうにも足がない。だからしばらくカメラなしの調査になったんです。ある時、子どもたちが夕食になるキャッサバの葉っぱを持ってきてくれたんです。へえっと思ってスケッチを描いてみたら、とたんに子どもたちが寄ってくるんです」

 なるほど、言葉は分からずとも、絵は世界共通だ。

 亀井さんがいうスケッチとは別に芸術的である必要はなく、観察したものを書き留めておく自然科学的な、もっといえば博物学的なものだ。自分が特に大事と思う部分は詳しく描くし、そうでもなければラフでいい。また、必要に応じて文字情報も付け加える。想像だが、バカの子どもたちにとって、見た目にも新鮮に映ったのではないだろうか。

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