第3回 弟子入りで世界は変わる

 なにしろ、カメルーンの当該地域はフランス語圏だし、さらにバカの成人男性はフランス語を理解する人も多いものの、子どもは母語であるバカ語を話している。そこでの調査研究となると、ゼロから言葉を覚えなければ、ということになる。ぼくなら確実に途方に暮れるし、亀井さんにとっても簡単ではなかった。

「やっぱり、滞在期間の最初の半年ぐらいは、調査としてはあまりものにならなかったですね。むしろ現地で暮らして、言葉を覚えていって、準備期間のような感じでした。最初はフランス語とバカ語の両方できる大人の男性に家庭教師のように、給料を払って、机で真向かいに座って、語彙表を使って勉強しようとしていたんですよ。まるで、言語調査やるみたいに。後で振り返るとさっぱりそれでは身につかなかったです」

 ちなみに、語彙表というのは、頭・目・鼻・口・首といった、どの言葉でもあるであろう単語を一通り網羅したもので、言語学系のフィールドワーカーが調査対象の言語と向き合う時、まず最初に使うものらしい。

 なにはともあれ、亀井さんにしてみると、やや大げさで非効率的なアプローチから始めてしまったようなのである。

 それでは、身につく効率的な方法とは……。