とにかく、私には夢があったのだ。口笛をぴゅ~っと吹いて、優秀な犬たちが草原を駆けまわり、羊たちを賢く集める。
 そんな映画のようなワンシーンが脳裏を何度もロードショーしていた。
 だから、この血統の良い三匹の犬たちには、とても期待していたのだ。が……、そんな夢も、はかなく消えてしまった。

 しかし! 私は諦めない。
 それなら、私がしつけてやろう! 彼らを優秀な牧羊犬に鍛え直して、一緒に働くのだ!
 颯爽と三匹を連れて、私は訓練と称して放牧地へ向かった。

 すると、後ろから、
「ガス玉よ!」と、声がする。

「え?」

 振り返ると、ブロンドの髪を風になびかせながら、碧い目を輝かせているスージーであった。
 彼女は、げじげじ髭のボスの若い奥さんで、時々、一緒に牧場に出てきて仕事を教えてくれる。

「よし! 今日は、徹底的に……、殺す!」
「え?」
 私は、そのブロンドの髪をなびかせ、きらきらと輝く、その澄んだ瞳を疑った。
「今、殺すって言った?」
「そうよ」
「……何を?」
「まさか、クリスティンを?」
 そのブロンドのきらきら目は、冷酷な殺し屋かと思った。

 映画で見たことあるなあ、殺人犯は、到底人殺しなどできないような美しい女性だったってやつだ……。などと考えていると、
「さあ、殺しにくよ!」
 と、私は連れて行かれた。
 こ、怖い……。

「なに怯えてるの?」
 ブロンドきらきら目は、満面の笑顔で言う。
「え? な、何を殺すのですか?」
 私は、おどおどした。
「ウサギよ~、ウサギに決まってるじゃない?」
「え? ウサギ? どうして?」
「だからさ~、ウサギが巣穴を掘るから、犬たちがウサギを追って穴にもぐってしまうのよ」
「そうか~」
「ウサギはね、ニュージーランドでは害獣なのよ。馬の放牧地の中に、縦の穴も掘って、馬たちが足を落として、骨折することもあるんだから」
「え? 骨折なんて、命取りじゃないですか!」
「そうよ~、だからね……、皆殺しよ!」
 と、ブロンドきらきら目は、鼻息を荒らげて言った。

「これ、あなたの分ね」と言われ、手に握らされたのは、小さな細長い金属のカプセルだった。
 その中には、毒ガスを発する粒がいくつも入っている。
 ウサギの巣穴を見つけると、数粒を投げ入れてから、穴を塞ぐのだ。

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