その4  「草食」はいても「草食系」はいません

 日本の少子化を招いたのは、女性だけでなく、もちろん男性側の問題もあるという。
 最近、さらに日本の少子化を進ませるのではないかと懸念されているのが、恋愛ベタの、いわゆる「草食系男子」の増加だ。

 外見は小ざっぱりして、さわやか。能力は高いが、物欲も、出世欲もなく、ひたすら平和な毎日を愛する。見回してみれば、今どきどこの集団にも1人や2人、必ずそんな「草食系」の若い男性がいるだろう。

 その定義は諸説あるが、「恋愛もセックスも避けて通る」という特徴が第一に挙げられることがほとんどだ。ほかにも心優しく、争いごとも嫌い。人を傷つけることも、人に傷つけられることも極力避けたい。そんな従来、世の男性のイメージだった「ギラギラした肉食動物」とは対照的な男性が「草食系男子」と呼ばれる。

 今回、進化生態学を研究する長谷川さんに、まずこれは聞かねばなるまい。こうした「草食系男子」的な生態は、自然界にありうるのだろうか?

「ありません。そもそもその前に、草食動物のイメージが間違っていますね。草食だろうが、肉食だろうが、オスはオス。必ず闘争心を持って、メスを巡る激しい戦いを繰り広げるものなんです」

 たとえばシカ。角を突き合わせる繁殖期のオス同士の激しい戦いによって、1~7%ものオスが死ぬ。ほ乳類の脳では、本能をつかさどる大脳辺縁系の深いところにある闘争心をコントロールする部分と、性欲をコントロールする部分がごく近い。そして両者はリンクしていると考えられている。つまり闘争心と繁殖力とは、ニアリーイコール。闘争の形は必ずしも肉体的闘争とは限らないが、草食でも肉食でも、繁殖しないオスがありえないのと同様に、「闘争しないオスはありえない」ということになる。