その3  崩れた“ミーアキャットスタイル”の繁殖

 進化生態学の見地からは、「生物としてありえないこと」と考えられている少子化。期せずして、少子化“先進国”となってしまった日本社会には、それを生んだ要因のヒントがいくつかあるという。まず女性側の問題だ。

「ヒトがおかしくなったというわけではなく、社会のほうが大きく変化して、たくさんの子供を持つことが、いい選択肢ではないと感じる女性が増えた。この状態では、産んでもうまくいかないと思っている人ですよね。そうした感覚が、子供は産まなくてもいい、結婚もしなくてもいいと思う人を増やしているのではないでしょうか」

産んでもうまくいかないのでは・・・

 これには、ヒトという動物の子育てに関する生態が、少なからず影響していると長谷川さんは見ている。子育てに関するヒトの生態、それは「共同繁殖」というスタイルだ。人間というのは、そもそも親だけで子供を育てるものではないらしい。授乳という点では母親が受け持つが、父親はもちろん、祖父母、兄弟、そして地域のサポートがなければ、子供が育たないという特徴を持つ動物なのだという。

「ヒトのほかにもミーアキャット、ハダカデバネズミ、マーモセットなど、共同繁殖で子育てをするほ乳類は、いくつかいます。こうした動物の特徴は、子供を育てるのに、大変な労力がいる種類であるということ。またほとんどが、大人になってもほかの動物から捕食される危険性が高いなどのため、一生群れでしか生きていくことができません。そこでみんなで一緒に暮らし、みんなで子育てを手伝う」

 ヒトにも心当たりがある。戦前までは日本でも、ミーアキャットスタイルの共同繁殖がおこなわれるのが普通だった。同居する祖父母、叔父、叔母などに加え、近所のおじさん、おばさんなど、家族ぐるみ、地域ぐるみで子供を育てていた。

 ところが戦後、社会が急激に変化すると同時に、その共同繁殖の枠組みが大きく崩れていく。