その2  必ず繁殖し続けていくのが生物です

 自然の恵みだけで食料をまかなうとすれば、ヒトのポピュレーションサイズの上限は1平方キロメートル当たり1.2~1.4人。ところが食料を自ら作り出すことで、人間はその40倍にも数を増やしてきた。自然環境に左右されるのではなく、コントロールが可能になったかに見えたヒトの個体数。だが再び食料の量によって個体数が調整される、そんな時代はすぐそこに来ているのかもしれない。

「全体としてこれだけ数が増えるというのは、繁栄しているということにほかならない。物質的に豊かになっていることは、間違いありません。とはいえ、利益には必ずやコストがつきものです」

 たとえば現代では、食料の増産を技術で成し遂げた一方で、狂牛病や鳥インフルエンザなどの病気が生まれている。これも繁栄の陰で生まれた「コスト」だ。ほかにも、温暖化による気候変動、都市化によるストレス増大など、すでに「コストといえる弊害は、あちこちに振り分けられているといえる」

 そうして頭脳という武器を持ったがために、個体数を、自らの意思で増やすことを可能にしてしまった人類。日本をはじめとする先進国を軒並み悩ませている少子化もまた、優秀な頭脳をもったヒトだからこその現象といえそうだ。

 ここで先進国のなかでも先頭を走っていると言われる日本の少子化について、おさらいしてみたい。女性が生涯に産む子供の数「合計特殊出生率」は、日本の場合2010年で1.39と世界最低水準。一般的には、出産の機会を逸してしまう晩婚の増加や、住宅事情、保育所などの施設が十分に用意されていない社会の枠組みなどが、子供が増えない要因として挙げられることが多い。

 だが、進化生態学の世界では、「その原因を学者たちもまだ特定しかねている」と長谷川さんは言う。