「森と日本人、そして『木を植えた男』」

――世界で尊敬されるアニメーション映画監督のフレデリック・バックさんですが、高畑監督もまたバックさんを敬愛され、交流を深めてこられました。バック作品と最初に出会ったのはいつ頃のことでしょうか。

 バックさんの作品との最初の出会いは「クラック!」というアニメーション映画作品でした。ちょうどアカデミー賞を受賞した1982年にアメリカで観たんです。受賞のことも何も知らずに観たのですが、すっかり虜(とりこ)になってしまいました。

 「クラック!」は一脚の木製ロッキングチェアが辿る運命を通して、カナダのケベックの伝統的な生活とその移り変わりを生き生きと情緒豊かに描いた作品です。セリフはありません。絵も音楽もじつに暖かく、アニメーションの魅力に満ちている。ユーモラスで、ほんとうに楽しい傑作です。

 自然と人のつきあい方を直接テーマにすることの多いバックさんの作品の中では異色とも言えるのですが、自然の恵みの中で人が暮らしていく姿をしっかり捉えていて、作家の姿勢は一貫しています。この映画を観た時の衝撃が忘れられず、人に勧めたり、自分も何回も繰り返し観ているんですけれども、今でもその魅力は全く色褪せません。

写真:寺尾豊

スタジオジブリが敬愛する鮮烈な「描写と色彩」の世界
フレデリック・バック展

高畑勲監督に大きな影響を与えたカナダのアニメーション作家、フレデリック・ バック。原画から映像作品まで、1000点に及ぶ大スケールの作品展示で、その世界観を 体感できる。東京都現代美術館で7月2日(火)~10月2日(日)まで開催。詳しくは下記ホームページで
http://www.ntv.co.jp/fredericback/

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