第5回 西田賢司がバイオリンを弾けない理由

ヘミダクティルス・ガルノティ(爬虫綱:ヤモリ科)
Indo-Pacific Gecko(Hemidactylus garnotii
ヤモリの赤ちゃん。夜になるとどこからか出てきて、お食事タイム。なんとこのヤモリの種には、オスがいない。すなわち、メスしかいない単為生殖するヤモリなのである。「わちゃ~」。しかも、いま気付いてびっくりなのは、インドや東南アジア原産の外来種ということ・・・・・・さらに「わちゃ~」です。(写真クリックで拡大)
体長:4 cm  撮影地:サン・イシドロ・デ・コロナド、コスタリカ

 前回に引き続き、雨季を迎えたわが家の話。屋内の湿度が増し、同居している小さな蛾やシロアリたちの活動が活発になってきた。蛾だけでも5種類はすんでいて、少しずつ生態もわかってきた。夕方から晩にかけて、さまざまな舞いを元気よく見せて、楽しませてくれる。
 で、そこに現れるのが、食欲満点!のお母さんヤモリ。体長は15センチほどで、卵が2つ大きく膨らんだお腹の中に透けて見える。最近、戸棚を開けたり、箱の中を整理したりすると、ヤモリの卵によく出会う。必ず2個いっしょに産んである。

 先日バイオリンを持ちあげると中からコロコロコロと音がしたので、「わちゃ~、中の魂柱(こんちゅう)*が外れてる~」と思いきや、ちゃんと魂柱はついている。

 はて? なにがコロコロしているのか?
 f字孔からのぞくと、なんか白いものが? もしかして・・・・・・「ヤモリの卵やん! わちゃ~。昨日はなかったのに!」

 しばらく音を鳴らすのはお預けになった。「無事に孵化して、バイオリンから旅立っていっておくれ~!」

*魂柱:バイオリンの表板と裏板の間で支えている棒

f字孔からのぞくヤモリの卵。やっぱり2コ。どうやってもf字孔から出てこない。「お母さんヤモリは、よくこの隙間から入れたもんやな~」と感心。卵をお腹の中に宿したお母さんヤモリは入れたのに、卵が出てこないことに少し「ふしぎ」をもらいました。ちなみに、昆虫と魂柱、バイオ(生物・生命)とバイオリン、なんか関係があるような、ないような・・・・・・(写真クリックで拡大)
大きさ:0.5 mm  撮影地:サン・イシドロ・デ・コロナド、コスタリカ
西田賢司

西田賢司(にしだ けんじ)

1972年、大阪府生まれ。中学卒業後に米国へ渡り、大学で生物学を専攻する。1998年からコスタリカ大学で蝶や蛾の生態を主に研究。昆虫を見つける目のよさに定評があり、東南アジアやオーストラリア、中南米での調査も依頼される。現在は、コスタリカの大学や世界各国の研究機関から依頼を受けて、昆虫の調査やプロジェクトに携わっている。第5回「モンベル・チャレンジ・アワード」受賞。著書に『わっ! ヘンな虫 探検昆虫学者の珍虫ファイル』(徳間書店)など。
本人のホームページはhttp://www.kenjinishida.net/jp/indexjp.html