第1回 きれいな言葉を拾い集めて

 でも、見ているのは昆虫より撮る側のほうかな。カメラマンの偏執者ぶり(笑)。「この1 枚に5年はかかってるんじゃないか」みたいなところ。しかも、写真がとても美しい。つくり物の世界ではないですからね。

 私、映画とかテレビドラマとか見ないんです。つくり手の立場で見てしまうから「そこは違うだろ」とか「私ならこうするな」とつい考えちゃって、見ていられなくなるんです。

 よく見るのは、NHKスペシャルみたいなドキュメンタリー物ですね。それも自然をテーマにしたものが好きです。

――西原さんも、取材をもとに作品づくりをしていますね。

 必ず現場に行って取材をして描きます。机の前でネタを考えて描くのが嫌で。

昆虫採集体験を描いた『むいむい』で集めた虫を標本にして保管している。必ず現場へ取材に行くのは、机の前に座っていては、想像もつかない言葉に出会うためだ

 というか、たとえば80年90年も苦労して生きてきたジイさんの一言なんて、私が机で考えても出てくるようなものじゃない。とてもきれいで、宝石のような言葉なんです。
 そういうのが、人それぞれに一杯詰まっているわけですよ。私は、取材に行って、それをもらってくるんです。

 ネイチャーカメラマンも、報道カメラマンも、そこらへんは同じじゃないでしょうか。CGでやれば、きれいな画像や映像をいくらでもつくれるのに、わざわざ現場へ行くというのは。想像もつかないきれいな言葉が、そこにあるからだと思うんです。