第6話 犬と羊、どっちが賢いの?

「こらー!」

 私のダッシュは倍速になり、ザビールの首根っこをひっ捕まえた。
 ガブリとやられている羊から離すと、ザビールの口には、もこもこ毛が残っていて、あがあが言っている。

「この、バカ!」

 私は、押さえつけて叱りつけた。むろん、悪いことをしたのだから、痛いくらいに押さえつける。
 すると、ザビールは耳を下げて、クーンと鳴いた。

 まだこの犬には、羊追いと、狩りとの違いが分かっていないのだ。

 ザビールのオオカミ化によって、怯えた羊たちが集まってひとカタマリになっている。けれど、こんなカタマリ方では、逆に言うことをきかないのだ。一度怯えてしまうと、羊たちは、ちょっとしたことでパニックになるし、逃げることに無我夢中になってバラバラになってしまう。それに、心臓発作を起こしてしまうものも出てくるのだ。

 とにかく情けないことに、三匹もの牧羊犬を連れてきて、一匹も役に立っていない。

 私はシュバオンのところに戻ると、後ろ足を持って強引に引っ張り出した。
 痛かったのか、ガウガウ声が、しおらしく「きゃ~ん」と鳴いて、穴から出てきた。

 残りの羊たちを集めるために、シュバオンに、「行け!」と命令を出し、ザビールには、私の横から離れないように指示をして歩かせた。

 羊たちは、冷静さを失わなければ、この羊追いが、放牧地の移動だということを知っていて、「分かってるわよ。こっちに行けばいいんでしょ!」とばかりに、自らゲートを出て、新しい放牧地へと入っていった。
 結局、羊たちが自ら考え、行動をとってくれたお陰で、私の仕事はすんなりと終わったのだった。

「ありがとう、羊さん」

 しかしまったく……、
 いったい、どっちが賢いのやら……。

つづく
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