第6話 犬と羊、どっちが賢いの?

 これらの血をひくシュバオン、クリスティン、ザビールは、言うまでもなく優秀な精鋭たちである。にもかかわらず、彼らときたら自分勝手な行動ばかり……。
 ザビールなどは特に、羊を獲物と思い込んでいるようで、完全にオオカミ化してしまっている。
 まったくもって、困った面々である。

 未だはっきりとは分かっていないが、犬の祖先はオオカミであるという説が強い。オオカミが家畜化され、人間と共に生きるようになったのだ。

 そもそも、犬の特徴である忠節心や命令に従う精神は、群れの中でリーダーを尊重し、協力しながら生きていくオオカミの性質を受け継いだものと言われている。

 しかしながら、長い歴史の中で人間に飼われ、餌を与えられるようになっても、犬の捕食動物としての本能だけは一切変化しておらず、ゆえに、今に至っても、小動物を見ると、目つきが変わるように興味を示す。

 ザビールなどは、生後二カ月ほどでこの家にもらわれてきて、誰から教わるわけでもないのに、羊を見ると、匍匐前進でそろりと近づこうとする。まさに、本能のままに育ったようなものだ。

 とにかく、素直で従順なザビールのことだから、人間のためにと一生懸命に羊を集めようとしているのかもしれない。

 が、どこか不安定で、元来のオオカミの遺伝子に、理性が奪われているようなところもある。

 こういった使役犬に必要なのは、人間のしっかりとした指示である。
 だから、私は口笛を吹いて、ザビールを呼んだ。

 しかし、一瞬、こちらに意識を向けるだけで、再び羊に狙いをつけている。

 これは、まずい……。完全に、オオカミになっている……。

 とりあえず、目の前にいる現場監督のはずのシュバオンに仕事をさせるために、メタボな胴体をつかんで引っ張り出すことにした。

 まるで、頑固に土の中から出てこない芋掘りのようなもので、引っ張っても引っ張っても、なかなか抜けない。
 シュバオンは、穴の中でガウガウ、「やめろ!」と言って、さらに頭をつっ込んでしまった。

 まったく、尻だけ出しているその尻が、憎たらしくなって、蹴ってやろうかと思ったが、その瞬間、オオカミ化しているザビールが、羊たちを追い詰めているのが見えた。

「これは、本当にまずい!」

 私は、体勢を変えて、猛ダッシュ。
 しかし、次の瞬間、ザビールが、両手を高く上げて飛び掛かった。

 ガブ!