第1話 実録!有人潜水艇による深海熱水調査の真実
その3 ぜったい変な未知の生物が見つかるに違いない
「そんなの科学者の高度な知識でも技術でもなんでもなくて、冒険していたらたまたま見つけただけじゃないか」。そう言われれば返す言葉もないかもしれない。
でも、「まだ見ぬ深海の、暗黒の熱水活動に、人類が出会ったことのない生物がひっそりと生きているに違いない、そしてそれを最初に発見したい」っていう想いや気持ちは、ものすごい人間の根源的な好奇心、そのものなんだと思う。だから「その想いで研究したらダメなんですか?」とまるで元水着モデル大臣的なセリフを口走ってしまう。
でもその想いって、本当は、多くの人にすごく共感してもらえるんじゃないかと思うんですが、それが何か? 実際は、いろいろ小難しく理由付けするけれども、でもやっぱりそれがボクらを研究調査に駆り立てる一番の原動力なんだ。
だから、今、ボクはしんかい6500にのって、いまかいまかと海底に到着するのをドキドキしているのだ。
しんかい6500、現在水深2500m。
海底まで100m。ここで、しんかい6500は500kgぐらいの重りを捨てた。すると落下していたしんかい6500は、ぴたっと海水中で静止する。今、完全に重力と浮力が釣り合った状態。
そして、イイジマさんが「しんかい、これより海底に降りる」と無線で「よこすか」に連絡し、ボクらはゆっくりと海底に近づいていった。
つづく(次回、大発見クライマックス!)

Webナショジオの好評連載「青春を深海に賭けて」が本になりました。連載の熱気そのままに書き下ろし番外編を加え、高井さんが深海を駆け巡ります!
384ページ・本体1600円+税
発行:イースト・プレス
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高井 研(たかい けん)
1969年京都府生まれ。京都大学農学部の水産学科で微生物の研究を始め、1997年に海洋研究開発機構(JAMSTEC)の研究者に。現在は、同機構、深海・地殻内生物圏研究プログラムのディレクターおよび、プレカンブリアンエコシステムラボラトリーユニットリーダー。2012年9月よりJAXA宇宙科学研究所客員教授を兼任。著書に『生命はなぜ生まれたのか――地球生物の起源の謎に迫る』(幻冬舎新書)など。本誌2011年2月号「人物ファイル」にも登場した。
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