第1話 実録!有人潜水艇による深海熱水調査の真実
その3 ぜったい変な未知の生物が見つかるに違いない
普段であれば、多少時間が掛かっても、「なにやっとんじゃい、このヘボパイロットが!激辛カレーで顔洗って出直してこいや!」とブラックなボクが出現することなく、「落ち着いてゆっくりね♥」とやさしく接することができる。
しかし今日は1秒でも惜しい。こういうときこそ、人間の器が試される。決して修羅の顔を見せることなく冷静に事を運べるか、ある意味ボクにとっても修羅場なのだ。
最優先事項は、噴出する高温の熱水をしっかり採取すること(もちろん温度をしっかり計測することもとても重要)。これによって、今日発見される「インド洋第4の熱水活動」の特徴がかなりの部分明らかにできる。
次に、噴出する熱水の周りにできる煙突状の構造物「チムニー」を採取すること。これもとても重要だ。チムニーを構成する元素(鉄とか銅とか亜鉛とか)の種類や鉱物を詳しく調べると、熱水活動を引き起こす海底のさらにその下の、海底下の熱水を作り出すメカニズムを知る大きな手がかりになる。
さらにそのチムニーには、超好熱菌という100℃を超える高温でピチピチ生きる微生物(バクテリアとアーキアという似て非なる小さな生きものたち)や水素、硫化水素、メタン、鉄なんかを栄養にする化学合成微生物が、ミッシリと棲み着いている。
こういう微生物は、極限環境微生物と言って、ボクらと同じ材料や仕組みで生きる生物のくせに、全く違う性質を持っている。だから、例えば地球で最初に誕生した生物の生き残りであったり、もしかしたら宇宙に飛び出していった宇宙的生物であったり、また地球の奥深くに悠久の年月潜んでいた地底生物であったり、いやなかったり、などなど、という興味深い生物なのだ。
そんなよく分からない興味だけでもなくて、これらの生物が持っている分子やそれが作り出す物質は、もしかして「色々役に立って大もうけかもしれぬ、おぬしも悪よのぉー、フォッフォッフォ」という興味もあるのだ。
そして、チムニーの中に棲むそういう微生物の種類や数なんかは、これまた深海熱水活動の違いによって変わるのだ。
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