第3回 写真家ジム・ブランデンバーグ 前編

「困難に耐え、神経を集中させれば自然界を再び新鮮な目で観察できるようになると考えたからだ」

 そう語るこの写真家は、誰に頼まれたわけでもなく、一日に一回しかシャッターを切らないという制限を、3カ月という長い期間に渡って自分に課したのです。しかも撮影地は、森の中にある住み慣れた自分の小屋の周りばかり。

 それは、これまで培ってきた知識と経験、そして勘をたよりに、自分の表現の限界に挑もうとする孤独な旅でした。

 いまの時代、北極だろうと南極だろうと、エベレストの頂上だろうと、カメラが持ち込まれたことのない場所を探す方が難しいでしょう。

 同じ撮影ツアーに乗り合わせたり、有名な撮影地に集中したりするあまり、全く同じに見える写真が、違う名前で発表されることだって、めずらしくありません。

 独自の視点とはなにか。今の時代に伝えるべき自然とは何か。

 長年最前線で活躍してきた写真家だからこそ、今一度、自分の仕事の意義を見つめ直そうと思ったのは、当然の成り行きだったのかもしれません。

 山歩きしかしてこなかったぼくが、それまでまったく興味のなかったカメラを仕事の道具にしたいと思ったのは、そうすることで自然をもっと深く知り、もっと近くに感じることができるかもしれないと考えたからでした。

 写真を撮る過程で、被写体となる動物の生態や、その土地の自然環境への理解も深まっていくことだろう。その上、カメラという機械に精通すれば、これまで以上に、自然界の色や光、そして時間といった要素に、もっと敏感になれるのではないだろうかと願ったのです。