馬は人間と一緒に歩くように調教してあるので、簡単に移動することができるけれど、問題は、羊の群れと、牛の親子である。
 羊は特に、ボロ毛布のぐるぐる太巻きのようなモコモコの小太りちゃんたちにもかかわらず、意外にも足が速くてすばしっこい。
 私は一人で羊の群れを集めたことがあるが、すぐにも私の足は、走るボロ毛布の小太りちゃんたちに負けてしまった。
 なのでやはり、羊の移動は、牧羊犬に働いてもらうに限る。
 口笛ひとつで言うことを聞いてくれるし、なにせ、人間の代わりに走ってくれるのだ。

 牧草地を見に行くと、そろそろ草の状態も、ローテーションが必要な時期のようで、私は、子馬たちの餌やりの後、放牧中の群れを移動させることにした。
 子馬たちに餌をやりに行くと、じゃじゃ馬ニーナの方は、相変わらずまだ怒っていて、耳を下げて、「来たな~人間め~」という顔をしている。
「まったく、いつまでもスネちゃって」と、首筋を撫でてやると、「触るな!」と、首を背けられた。
「はいはい」
 今日は、これくらいにしてあげよう。なにせ、このあと私は忙しいのだ。

 さっさと三匹の相棒たちを連れて、馬たちの移動を済ませると、羊の群れが入っている牧草地へと向かった。

 途中のちょっとした坂道で、ロットワイラーのオス、シュバオンが、「はあはあ」と息を上げている。
 ブルドッグみたいにガツガツと食べ、ガブガブと水を飲んで、体重が重く、ドカドカと歩く彼は、走るのが苦手で、羊追いには向いていないけれど、三匹の中でも一番歳がいっているものだから威張っていて、他の二匹の現場監督的な存在である。

 ボーダーコリーのメス、クリスティンは一番頼りになる。
 小さな体で身軽なことから、まるでキツネのように機敏で足が速く、性格も穏やかで、人間の言うことをよく聞く。まさに、牧羊のために生まれてきたような犬だ。

 ジャーマンシェパードのメスは、生後一年に満たず、調教が未完成であるものの、そもそもこの種は、ドイツにおいて、オオカミから羊を守る勇敢な牧羊犬だったことから、将来が期待されている。
 女の子なのに、何故か、ニュージーランドの有名なスタリオン(種牡馬)の名、ザビールというヘンテコな名前が付けられていた。

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