第4話 ニーナとシンコーです。よろしく。

 そもそも私は、なんのあてもなくニュージーランドにやってきて、田舎の小さな競馬場を地図上で見つけると、その近くで宿を借り、毎日の早朝のトレーニングに突撃的におじゃまして、「牧場の仕事を探していま~す。一生懸命働きます!」と言って、この牧場を見つけたのだ。
 快く、私を受け入れてくれたげじげじ髭のボスは、いい人であること間違いないし、私も、変わり者ではあることは否めないけれど、怪しい日本人ではない。もちろん、馬の骨でもない。
 だから、お互いの信頼は成立しうる関係ではあるのだけれど、だからと言って、しょっぱなから、子馬の子育てを任されるなんて……。
 と、困った顔をしながらも、私の口元は、ニンマリしていた。
 ニヤ、ニヤ。
 だって、子馬の世話を任されるなんて、牧場の仕事の中でも、花形中の花形である。やり甲斐もある。
 ボスは、最初からそのつもりで、この牧場の初仕事に、こんな大変な作業をさせたのだ。きっと、親から離れて、独り立ちしなければならない子馬たちの悲しみと苦労を教えたかったのだろう。
 昼メロげじげじめ~。やるな~。

 と、本当にボスがそう思ったかは定かではないのだが、私は俄然、やる気になった。
 げじげじ髭のボスの方も、海賊の一味のような髭をしているけれど、性格は温厚で優しく、思いやり深い。その人となりをうかがわせるように、彼は、
「寂しい思いと怖い思いをして、親と別れた子馬たちに、たっぷりと美味しいグレイン(穀物)をあげなさい」と、私に指示をした。
 確かに、子馬たちの心は傷つき、疲れきっていることだろう。人間とて、親と別れるのは辛いものだ。
 さっそく私は、餌の中でも特上級の、黒蜜でからめた甘い穀物の餌を与えることにした。
 子馬たちにとっては、はじめての味である。
 がぶり、がぶりと、頬張ると、
「こんなに美味しいもの、食べたことない!」とばかりに、ボロボロと口からこぼしながら、夢中になっている。

 そんな子馬たちのことを、あらためて紹介しよう。