第5回 マグロは時速80キロで泳がない!?

 ちなみに、先ほどの遊泳速度の比較に魚類が入ってこなかったのは、海鳥、海洋哺乳類、ウミガメのように、肺呼吸で息をこらえて潜る動物と、単純に比較しにくいからだ。

 水中での魚類は別格。きっとすごい速度で泳ぎまくっているに違いない、とぼくは思った。

 しかし、バイオロギングで明らかになってきたデータは、どうもそうではないらしい。

「魚の泳ぐ速さ比べというのが、子ども向けの図鑑でよく出てきますよね。カジキは100キロで泳ぐとかマグロは80キロだとか。でも、私がハワイで測ったイタチザメというサメは2キロくらい、マグロもちゃんと測ると時速3キロとかそれくらいなんですよ。昔の論文を調べていると、釣りをしてマグロがかかったときに出ていく糸のスピードを拡大解釈して計算したりします。そもそも非常時の速度だし、測り方も対水速度になっていなかったり、船も動いているし……」

 へえっ、とぼくは驚いた。

 ぼくも、ほかならぬ、カジキは100キロで泳ぐと思っていたクチだからだ。

 それが、時速2キロとか3キロとは!

 非常時でも、カジキはせいぜい時速30キロくらいであろうというのが、渡辺さんの読みで、今後、そういったことを検証できたら、魚類についての教科書も、子ども向けの本もずいぶん書き直されることになるだろう。