第4回 フィールドは「未踏の大地」

 渡辺さんが、フランス領亜南極のケルゲレン諸島で調査をした時のこと。

 ジェンツーペンギンにロガーを取り付けたが、うまく回収できなかった。

 通常、営巣中のペンギンは、必ず巣に戻ってきてくれるので、バイオロギングの対象としてはとても適している。例えば、日本の極地研究所が中心になって行った「海氷域におけるペンギン研究計画」SIPENSでは、アデリーペンギンを南極海生態系変動の指標生物と位置づけ、5年間にもわたって連続調査を行ったほどだ。「指標」になるためには様々な条件が必要だが、そのうちの一つは「調査しやすさ」だ。

 しかし、ケルゲレン諸島で、渡辺さんはタイミングが悪すぎた。ちょうど営巣を終える時期で、ロガーを装着したペンギンたちは、帰ってきてくれなかった。

 ちなみに、データロガーの値段は1個につき約70万円! 研究者が回収に必死になる理由は、第一にデータのためだが、高価な機材を失いたくない、ということも当然ある。

ケルゲレン諸島のケルゲレンヒメウ。ロガーのプロペラのねじが緩むアクシンデントが意外な結果に……

 一方、同じ島で、もうひとつの研究対象だった、固有種のケルゲレンヒメウでは、別のトラブルに見舞われた。ロガーを回収できたのはよいのだが、なぜか、水中での遊泳速度が記録されていない。

 よくよく調べてみると、装着された個体が、長い首をまわして遊泳速度測定のためのプロペラの部分をつつき、軸を固定しているネジがゆるんでしまったらしい。

 渡辺さんは、ロガーからパソコンに吸い上げた生データでおもしろいことを発見した。

 水中での遊泳速度は測れていないものの、空中に出た時にプロペラが回転し、なにがしかの数値が記録されている。ネジがゆるんだため海中では役に立たなくなったものの、飛行中には回転するようになっていたのだ。

 目的のデータが取れず、大失敗である。しかし、そこで渡辺さんは考えた。