第2回 ノースウッズとの出会い

 どうしてノースウッズを撮影のフィールドに選んだのか?

 そんな質問を、これまでに何度聞かれたことかわかりません。きちんと答えたいと思うのですが、これがなかなか難しい。奇妙な言い方だと思われるかもしれませんが、ノースウッズはある日突然、人生の前に現れて、いつのまにかぼくの一部となっていたのです……。

 大学4年の秋。自分の部屋で眠っていたときのことでした。気がつくとぼくは、薄暗いちいさな木造の小屋のなかにいました。壁の窓がぼんやりと明るく、外にはちらちらと雪がふっています。窓をのぞくと、地面にはうっすらと白い雪がつもり、北国を思わせる濃い緑の針葉樹がどこまでも立ち並んでいました。

〈ここはいったいどこなのだろう〉。

 ぼんやりと森をながめていたつぎの瞬間、視界にすっと灰色の影が躍り出ました。その影は木のそばで立ち止まり、こちらをふりかえりました。 それは……、一頭の立派なオオカミでした。

 これまでにオオカミを見たことはありません。でも、そのとき確かに、目の前の巨大なイヌ科の動物を見て、なんの疑いもなく「オオカミだ」と思いました。オオカミはするどい視線をこちらに投げると、すばやく森の茂みへと走り去ってしまいました。そこで目が覚めました。部屋のまっくらな天井に、オオカミの残像がいつまでも浮かんでいました。

産まれたばかりの子ジカは、じっと動かずにいることでオオカミから身を守る。