第3話 大切なお体なのよ~
人間になれていない子馬に近づくことは、本当は危険極まりない。
小さな体でも、結構な力はあるし、下手をすれば共に怪我をしてしまう。
しかし、こっちも体を張って真正面から向き合えば、きっと子馬たちも分かってくれるだろう。
そんな期待を胸に、そろ~りと手を伸ばして、「お~よしよし、お~よしよし」と言ってみた。これが、ムツゴロウ式なのである。ははは(笑)
「お~よしよし、お~よしよし」
テレビでは、どんな猛獣も、腰をひょわひょわさせて大人しくなっていたのだ。
「それそれ、ひょわひょわさせろ」
伸ばした手は、お尻に届いて、撫でてみる。
ところが……、
「なにすんだ!」 ドン!っと、またも蹴られてしまった。
今のは、ひょいっと避けなければ、本当に蹴られるところだった。危なかった~。
ということで、早くも、ムツゴロウ式は、玉砕してしまった……。
子馬たちの方も、壁に八つ当たっていた足がじ~んとなっているようで、馬房の隅で、じっと耐えている。
「……だからね、そろそろ諦めなさい。人生、諦めが肝心なのだよ」
すると今度は、激しく抵抗していた子馬が、なにやら可笑しな行動をとりはじめた。
お尻を突き出して、もう一頭の子馬の方に向けているのだ。
まさか……、
予感は的中だった。その子は、まるで、「足がじ~んとならない、柔らかいものを見つけました! 大発見!」とばかりに、もう一方の子馬のお尻に照準を定めているのだ。
お尻を突きつけられる方も、「蹴られるのは、ヤダヤダ」と逃げまわる。
しだいに、お尻とお尻の尻相撲になって、とうとう、一撃が飛んでしまった。
バッコ!
そして、負けずに、バッコ!
バッコ! バッコ!
もう、見ていられないくらいのバッキング(後ろ蹴り)の嵐である。子馬とて容赦はない。まるで、ロデオさながらである。