第3回 生き方がアートになる

――伊勢谷さんは「地球を守る」とか「無駄なものを再生させる」ということを、以前からずっと考えていらっしゃったのですか。

 いえいえ、とんでもない。そうとうに身勝手で、自分のことしか考えない人間でしたよ、ついこの間までは(笑)。
 20歳前後の若いころは、どうしても見てくれのかっこよさで人を見る。ぼくは学生時代(東京芸術大学)からモデルをやっていたので、ことさらそういうところがあったと思う。パンクロックとか、反体制的なものに憧れてもいましたしね。

 しかも芸大の学生なんて、アーティストはエゴイストで当たり前みたいに思っていますからね(笑)。自分が好きなようにすることが、自分を幸せにすると思い込んでいたんですよ。

――それが変わるきっかけが、何かあったんですか。

 たくさんの物に囲まれて生活することや、社会に反抗することがかっこいい。つまり、目的ではなく形にとらわれていることというのが、まったく無駄だと気づいたときからですね。自分の好きなことを、好きなようにやろうとしているのに、ちっとも幸福感を感じないし、充足感もない。
 社会を否定的に見て、自分本位で行動すると、結局はまわりの人を傷つけるし、自分も傷つく。逆に言えば、人を幸せにすると、自分も幸せになれるんだという当たり前のことに、20代の半ばでやっと気づいたんです。それからこんなこともありました。
 芸大の大学院を卒業して、映画の世界に入って、26歳か27歳のころでしたかね。沖縄の離島へ行ったことがあるんです。
 そこにヒッピーが2人生活していた。住人は朝起きて海で魚を捕って、山で山菜や野草を採ってという何も買わない生活をしていたんです。自然から必要な物を自給し、最低限の資源で生活する。それを体験しているうちに、ぼくは東京へ帰る理由を見失ってしまったんです。お金がなくても、物にとらわれなくても、健康的でとても自然である。幸せを感じてしまったんですね。
 そこから、自分は本当は何をやりたいのか、どういう生き方をしたいのかと考えるようになったんです。