第2回 研究仲間は、ぼくを「バッグマン」と呼ぶ

ベニボタルの一種(コウチュウ目:ベニボタル科)
A species of net-winged beetles
落花生の殻のような翅の模様。ホタルの仲間に近いが、発光をする種は見つかっていないようだ。あでやかな色と黒のコントラストは警告色を装っている。「食べてもおいしないで~」。ぼくも着色料たっぷりの食品は、苦手だ。
体長: 10 mm  撮影地:モンテベルデ、コスタリカ

 米国ワシントンにあるスミソニアン博物館のハムシやゾウムシの分類学者仲間たちは、僕のことを「バッグマン」と呼ぶ。なんで?

 その理由は、森へ採集に行った時のぼくの格好にある。いつも腰に大きな緑色のゴミ袋をぶら下げているのだ。ぼくは昆虫を採集すると、餌や住まいとなる植物も一緒に小さな透明のビニール袋に入れる。空気もたっぷりと入れ、洗濯バサミで封をする。そのパンパンに膨れ上がったビニール袋を、腰にぶら下げた緑色のゴミ袋にためていくのである。少し怪しい姿だが、重心は腰回りにドシン!とあって、両手も常に空けていられるので動きやすい。で、さらなる虫を求めて森の中を歩く。

 つまり、昆虫の住みかごとお持ち帰りして、昆虫の生態を飼育して調べるのがぼく。一方、分類学者はできるだけ多くの標本を得るために、昆虫だけをエタノールや毒薬が入った5センチぐらいのガラスチューブにためていく。胸ポケットに軽く納まるサイズだから、大きなゴミ袋なんて必要ない。ちなみにバッグマン(bagman)はアメリカ英語で「ちんぴら」、イギリス英語では「浮浪者」と言う意味。なるほど、ハズレではない。

採集に、網とゴミ袋は欠かせない。ここはバルバ火山のふもとにある、ブラウリオ・カリージョ国立公園の標高2000m地点。調査が終わり、熱帯雲霧林を後にする。また行きたい場所のひとつだ。

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西田賢司

西田賢司(にしだ けんじ)

1972年、大阪府生まれ。中学卒業後に米国へ渡り、大学で生物学を専攻する。1998年からコスタリカ大学で蝶や蛾の生態を主に研究。昆虫を見つける目のよさに定評があり、東南アジアやオーストラリア、中南米での調査も依頼される。現在は、コスタリカの大学や世界各国の研究機関から依頼を受けて、昆虫の調査やプロジェクトに携わっている。第5回「モンベル・チャレンジ・アワード」受賞。著書に『わっ! ヘンな虫 探検昆虫学者の珍虫ファイル』(徳間書店)など。
本人のホームページはhttp://www.kenjinishida.net/jp/indexjp.html