Vol03 これから 「透明な船長」になりたい

ISSのロボットアームが日本の無人補給船「こうのとり」をつかんだ(2011年1月)
(画像提供:JAXA/NASA)

 ところで世界の宇宙開発は、若田が選ばれた頃から大きく様変わりしている。NASAでは2011年、30年間飛行を続けてきたスペースシャトルが引退する。以後、ISSへの物資や人間の輸送は民間会社が担うことになる。だが開発には時間がかかり、当分の間ISSに宇宙飛行士を運ぶ「足」はロシアのソユーズ宇宙船だけになる。また、スペースシャトルの引退に伴い、宇宙に飛び立つ機会はISS長期滞在だけになる。宇宙に行ける飛行士の数は減るし、選ばれても長期滞在となれば、訓練と宇宙滞在で長期間、家族と離れることになる。そんな背景から、NASAを去る米国人宇宙飛行士も多い。

 一方、中国は自国の有人宇宙船を2003年に打ち上げ、宇宙ステーションの打ち上げを2011年に開始すると発表。インドも有人宇宙船を目指すなどアジア各国が、急ピッチで宇宙開発を進める。南米やアフリカ諸国もこれに続いている。

 日本はISS参加で日米欧露の宇宙大国に肩を並べ、若田が船長になることで指導的な立場に立つことになる。だが日本は、世界的にも高い宇宙技術を持ちながら、今後につながるようなISS以後の有人宇宙計画をはっきりと打ち出していない。若田はこの状況をどんな思いで見ているのだろうか

若田:中国やインドはどんどん宇宙開発でリーダーシップをとっていくことになると思います。では日本はどうするか。得意分野を生かして競争に参加し、互いに切磋琢磨してレベルをあげ、その技術で国際協力をするのが望ましい姿だと思います。

日本は、2回連続でISSへの貨物便「こうのとり」を成功させ、世界各国から非常に高い評価を得ました。シャトル引退後、大きな荷物は「こうのとり」でしか運べません。また「きぼう」日本実験棟は、筑波の管制官たちが24時間体制で安全に運用していますが、これも非常に高水準の技術と経験が必要です。

今、各国がISSのある軌道(地球低軌道)と地上を往復する、有人宇宙船の実現を目指しています。日本がやらなくても他国がやるでしょう。でも日本が有人宇宙船を提供すれば、リーダーシップをとれる。日本には実現できる技術があるのです。宇宙開発は非常に幅広い分野への波及効果があるプロジェクトです。3月に起きた震災でも被災地の状況のモニターや通信に日本の人工衛星が貢献しました。今後、ますます宇宙環境の利用が必要になる中で、有人宇宙船は強い牽引力になります。技術立国として生きていくなら避けて通れない。私は船長を務めた後は経験を生かし、日本の有人宇宙船開発に貢献したいと思います。