Vol03 これから 「透明な船長」になりたい

1996年の飛行で。前列中央が、若田が目標とするダフィー船長。
(画像提供:JAXA/NASA)

 国際宇宙ステーション(ISS)の船長に任命された若田光一は、2011年3月末から船長としての訓練を始めた。2013年末の打ち上げまで約2年半。船長の任務は地上から始まる。チーム一人ひとりの役割分担を考慮し、ISS参加国である米国、ロシア、ヨーロッパ、日本、カナダで行われる訓練カリキュラム全体が無理なく計画されているかを分析する。チームは船長のタイプや方針によって、かなり雰囲気が異なるという。若田はどんな船長を目指しているのだろうか。

若田:私はこれまで、たくさんの尊敬する上司やリーダーに出会ってきました。航空会社時代の課長さん、スペースシャトル、国際宇宙ステーションの船長もそうです。例えば、スペースシャトル飛行では1回目、2回目の飛行ともNASAブライアン・ダフィー船長と一緒に仕事をさせてもらいました。彼は「リーダーを感じさせないリーダー」です。気づいたら彼のリーダーシップで仕事がうまくいく。これは「リーダーの極意」だと思いますね。

チームにとっては仕事が上手くすすみ、ISSできちんと成果を出し、しかもチームみんなに宇宙での仕事を楽しんでもらえればいいわけです。誰がボスかは関係ない。例えれば「透明な氷」のような船長でありたい。それは非常に難しいのですが、ダフィー船長は実現していた。訓練の時からクルーとのコミュニケーションをしっかりとって、一人一人が何を考えているのか常に把握し、さりげなくアドバイスを与える。私も教えられているという記憶がないのに、自然に彼から学びとっている。彼のような理想のリーダーにどこまで近づけるかが目標です。

――船長任命時の記者会見で、「和の心」を大切にしたいとおっしゃってましたね。

若田:チーム全体のアウトプットを出すことを主眼において、まとめていきたい。だからこそチームのハーモニー、つまり「和の心」を大切にしたいのです。もちろん、緊急事態にはトップダウンで一方的に命令することもありますが、そんなときもチームが納得して迅速に動くためには、普段の信頼関係が必要です。

日本人は自分の任務をしっかり責任をもって行いたいという人が多い。だから、そもそも自分が日本人として持っている心を、宇宙飛行の場で実現すればいいと思っています。さらに宇宙飛行士はみな、宇宙に対する熱い想いを持って仕事をしているわけだから、それぞれがやりがいを感じる仕事を担当してもらい、「個々のゴール」を達成すると同時に「チーム全体のゴール」も達成できるようにしたいですね。