痛みとは、感覚・情動体験である。

 愛知医科大学・学際的痛みセンターの牛田享宏教授は、まずそのように教えてくれた。

 今回はそこを出発点にしつつも、もう少し「痛み」にまつわる総論を聞いた上で、興味深い示唆を与えてくれる症例や関連する研究に進もう。

 まずは、ゴリゴリのメカニズム論から。

愛知医科大学教授の牛田享宏さん。2018年にできたばかりの『慢性疼痛治療ガイドライン』では、厚労省のワーキンググループの研究代表者を務めた。
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「神経の末梢には、侵害受容器、つまり、痛みを起こす刺激、熱の刺激ですとか、機械刺激ですとか、化学物質による刺激などの受容器があります。そして、そこからのシグナルは、脊髄の後角(こうかく)というところから脊髄に入り、脊髄視床路(ししょうろ)というのをさくさく上がっていって、脳の視床に入っていくわけです。その中でも脳の外側に行くシグナルは感覚、つまり痛いという感覚にかかわり、内側に行くシグナルは、情動として痛みを経験することにつながっていくんです」

 細かいことを考えるときりがないものの、ここでは神経伝達の段階からすでに感覚と情動にかかわるルートが特定されていることに注目しておきたい。

「痛みで苦しむ患者さんは、感覚よりも情動のほうで苦しんでいるのは間違いないんです。例えばある人に蹴られて痛いっていっても、蹴った人が好きな人であればうれしいということすらあるわけですから。その場合は、痛いって思っても、苦しんでないですよね」

 そんなふうに牛田さんは、飄々とした口調で、またも含蓄深いことを述べるのだった。

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