薬が効かなかった人たちが多く集まってくるので、減薬をまず検討することも多くなる。その上で、理学療法士がかかわるような運動療法や、臨床心理士がかかわるようなカウンセリングや、疼痛マネジメントの患者教育(「慢性疼痛教室」というものがあるそうだ)や、精神科的な認知行動療法も行うこともあるし、整形外科的な手術や小侵襲(身体的負担が少ない)の外科的治療を検討することもある。

「痛みを完全になくすことはできなくても、自分なりの主体的な目標を持って生きていけるようにするのが目標です。本当に、痛いのをゼロにするのは難しいんですが、それと付き合って行けるようにできれば、というのが大切なことだと思っています」

 その上で、最近、牛田さんが医師として強調したいと思っているのは、治療の前のしっかりとした「診断・病態分析」だった。

「集学的な治療というものが注目されがちなんですが、そこに至る前の診断と病態の分析というのがすごく重要です。患者さんにとって、何がクリティカルなのかというのを見極めるといいますか」

患者にとっては、痛みとうまく付き合うこと、医師にとってはしっかりとした診断が大切だという。
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 牛田さんが言う「生物心理社会モデル」において、生物学(医学)的、心理的、社会的な要因が互いに影響し合うことを見ていくのはとても大事だ。そうすると、これまでの「生物医学モデル」にはなかった要素である、心理的、社会的な要因を強調することになりがちだし、このインタビューでもそうしてきた。

 でも、だからといって、医師が最初に担当する医学的な診断が軽視されてはならない。当たり前のことだと思われるかもしれないが、実際問題として、今、牛田さんが診る患者さんの中には、ずっと前に見つけられているべきだった疾患がスルーされてしまっている場合がしばしばあるという。

「ひとつ簡単な例を言いますと──性格が悪くて、怠け者で、痛みがあるからって運動療法もやらないから太っていって、ますます体が固くなってきてるんだって言われてた患者さんがいました。それで、精神的な指導で認知行動療法をしましょう、みたいな話になっていたんですけど、念の為に詳しく調べたら、脳腫瘍だったんですよ。脳腫瘍になると性格変わるって言われますけど、そうじゃなくて、もともと性格悪くてやる気がないからって医師が思い込んだままなら、治療の方針も誤りますよね」

 その上で、牛田さんはとても象徴的に思える、一人の患者さんについて詳しく語ってくれた。

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