第4回 遺伝子検査で医療はどこまで進歩するのか

 松田さんがバイオバンク・ジャパンの試料を使って行ってきた「遺伝とがん」についての研究を見てきた。

 食道がん、肝臓がん、胃がんと十二指腸潰瘍などで得られた新たな知見は、専門的にもブレイクスルーであり、一般的な興味からも「おおっ」と思わされる部分が多かったのではないだろうか。血液型がA型とO型では十二指腸潰瘍になりやすさが違うかもしれないなど、「血液型と性格」の関係のように統計的には差が検出でないものとは別次元のサイエンスだ。

 2009年、松田さんたちがヒトが持っているSNPのうちの数十万カ所を調べることで始まったこの分野は今や花開いて、世界各地で日々探求されている。ぼくはこれを、地質学者や生物学者が世界中を旅して新たな発見を成し遂げた博物学の時代をゲノムの世界の研究者たちも今経験しているのだと感じている。

 今、本当に多くのリソースがこの分野に注ぎ込まれているので、遠からずより理論が深まり(例えば、がん化のメカニズムがよりよく理解できるようになったり)、応用の仕方が見出されたり(よりよい予防、発見、治療ができるようになったり)していくことだろう。

 すでに松田さんの説明でも、予防(リスク予想とそれに基づいた生活指導など)については言及されたので、ここではその先を見ていこう。まずは「検査」の話題に触れてから、多くの人が関心を持つだろう「治療」の話へと進む。

「検査について、最近(2018年)、バイオバンク・ジャパンの試料を使って面白い研究が出てきました」と松田さん。

遺伝子の情報を基にした「精密医療」の研究に取り組む東京大学大学院教授の松田浩一さん。「オーダーメイド医療」「個別化医療」など、さまざまな呼び方があるが、一人ひとりに合った医療を提供するという本質は同じだ。
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