ピロリ菌、胃がん、十二指腸潰瘍、そして血液型の不思議な関係について。

「ピロリ菌が胃がんや十二指腸潰瘍の原因になることはよく知られています。でも、感染者の中で実際に病気になる人はごく一部です。病気になる人に共通する要素があるのか知りたいですよね。さらに、昔から、十二指腸潰瘍になる人は胃がんになりにくいと言われてきました。これはピロリ菌に感染していても同じようです。こういった、病気になりやすさ、なりにくさ、というのはどんなふうに決まっているんでしょうか。7000人の十二指腸潰瘍患者と、2万6000人の健常者を比べて、まず十二指腸潰瘍のリスク因子になっている2つの遺伝子を見つけました。ひとつは、細胞膜上に発現する前立腺幹細胞抗原(PSCA)という糖タンパク質の遺伝子で、もうひとつは血液型を決めるABO遺伝子だったんです」

 まず、PSCA遺伝子の方は、十二指腸潰瘍になりやすいタイプの人は、そうでない人に比べてリスクが1.84 倍高い。さらに血液型のABO遺伝子では、O型の人ではA型に比べ1.43倍、リスクが高いことが分かったという。血液型が関係しているというのは意外だが、実は血液型を決めるABO遺伝子は胃、十二指腸、大腸などの消化管で多く発現しており、O型の人はコレラやO-157感染が重症化しやすいことが知られている。つまり、何らかの細菌に対する防御応答に関与していることが示唆されており、ピロリ菌の感染についても、それと似たメカニズムが働いているのかもしれない。

 また、さらに胃がんとの関係を調べた所、十二指腸潰瘍のハイリスクタイプが、胃がんでは逆にリスクが半分(0.59 倍)になることが分かった。ここでは、深くは立ち入らないけれど、想定されるメカニズムをごく一部だけを述べると、「PSCA遺伝子の糖タンパク質は細胞の分裂増殖を活性化する性質があり、これによって十二指腸潰瘍が修復されやすくなる半面、胃がんの増殖を助長してしまう」のかもしれないという。

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