ほかにないアートを生み出す:フォーゴアイランド・アーツ

自分たちの物語

フォーゴアイランド・イン・シネマではカナダ国立映画庁の作品やフォーゴ島を撮影したドキュメンタリー映画も見ることができる。©Masayo Hando
フォーゴアイランド・イン・シネマではカナダ国立映画庁の作品やフォーゴ島を撮影したドキュメンタリー映画も見ることができる。©Masayo Hando
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 映画監督コリン・ロウは27の短編映画を製作し、フォーゴ島の暮らしと住民の声を記録し、住民を前にその映画を上映して見せた。人々は、カメラに映し出されたほかの集落の住民が生活の不安や悩みを打ち明ける姿を目の当たりにし、初めて島のみんなが同じ問題や苦難に直面していることを知った。隣人の言葉が胸に響いた。共感から連帯の気持ちが生まれ、交流のなかった集落同士の対話が始まった。みんなで助け合い、船を調達し、沿岸タラ漁から沖合漁業に転換することを決断した。映画が島の未来を切り拓くきっかけをつくった。

 島の人たちは、映画や芸術が自分たちの物語を伝える媒体となり、意識改革を促し、伝統や知恵、文化や暮らしを保持するための後押しをしてくれたことを決して忘れない。ジータにとってもそれは同じだ。この経験があったから、ジータはアートの持つ力を信じ、フォーゴアイランド・アーツというプロジェクトを構想したのだ。

 フォーゴアイランド・インの中には、シアターがつくられた。客室が29しかないこじんまりしたホテルに設置された本格的なシアター。それは島の歴史においても初めての映画館となった。

 フォーゴアイランド・アーツは、あのドキュメンタリー映画「フォーゴ・プロセス」の担った役割を受け継いでいると言えるだろう。フォーゴ島にとって、アートは観光と一体となり、フォーゴ島を世界と結びつける役割を果たしている。

この連載はカナダ観光局の提供で掲載しています。

著者 半藤将代(はんどうまさよ)

早稲田大学第一文学部卒業後、トラベルライターやイベント・コーディネーターとして十数カ国を訪問。その後、アメリカに本社を置くグローバル企業で日本におけるマーケティング・コミュニケーションの責任者を務める。 1999年、カナダ観光局に入局。日本メディアによるカナダ取材の企画やコーディネートに取り組む。2014年には、単なる観光素材の紹介にとどまらない新たなコンテンツ・マーケティングの可能性を開くため、オリジナルコンテンツを満載したウエブサイト「カナダシアター」を開設。カナダの文化や歴史、アートなど、あらゆる分野の読み物や動画を活用して多彩なストーリーを展開した。2015年、カナダ観光局日本地区代表に就任。通年でのカナダ観光の促進や新しいデスティネーションの商品開発を推進。現在は、ニューノーマルにおける新しい観光のあり方を模索している。

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