ほかにないアートを生み出す:フォーゴアイランド・アーツ

ポツンとスタジオ

フォーゴ島の東、北大西洋に面したスクイッシュ・スタジオ。氷山のようにも見える。©Destination Canada/Chris Hendrickson
フォーゴ島の東、北大西洋に面したスクイッシュ・スタジオ。氷山のようにも見える。©Destination Canada/Chris Hendrickson
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 海岸近くにポツンと建つアーティスティックなスタジオ。その風景そのものが、まるで現代美術のようだ。都会のような光や音はここにはない。見えるのはフォーゴの自然と島の人たちの暮らし。聞こえるのは、フォーゴの自然と島の人たちが生み出す音と声だけだ。フォーゴ島と一体となりながら誰にも邪魔されず作品づくりに没頭する。このスタジオは世界のアーティストの心をつかんだ。フォーゴ島での創作活動を希望する問い合わせは後を絶たない。

 世界中からやって来たアーティストの作品は、ホテル内のアートギャラリーで行われる講演会や展覧会で披露されるほか、書籍として出版もする。こうした取り組みを通じ、フォーゴ島の人たちと世界のアーティストがつながっていく。お互いに刺激を与えあいながら新たな気づきを得たり、領域を超えてさまざまなことに思いをめぐらしたりする機会が創出されていく。

 ジータがなによりもアートの力を信じるのは、ある映画の存在があるからだ。1960年代後半、フォーゴ島で伝説的なドキュメンタリー映画「フォーゴ・プロセス」が撮影された。映画の力でコミュニティの連帯や社会変革を促すため、カナダ国立映画庁のチャレンジ・フォー・チェンジ(Challenge for Change)プログラムの一環として映画はつくられた。映画は、沿岸タラ漁の崩壊で苦しんでいた島内の集落ひとつひとつに光を当て、住民の声に耳を傾けるものだった。

 当時のフォーゴ島は、生活の糧であるタラ漁を失い、政府は住民に島からの退去を迫り、まさに危機的な状況にあった。故郷で生き抜くためには、この難局を切り抜けなければならない。当時、小さな10の集落が島に散らばっていたフォーゴ島では、集落間の交流はなく、お互いにずっと孤立してきた。

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