住民総がかりで観光客をもてなす:フォーゴアイランド・イン

コミュニティー・ホスト

島の人たちは、昔から野外で火を焚いて昼食を楽しんできた。コミュニティーホストと楽しむ人気の”ボイルアップ・ランチ“
島の人たちは、昔から野外で火を焚いて昼食を楽しんできた。コミュニティーホストと楽しむ人気の”ボイルアップ・ランチ“
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 そしてユニークなのは、ホテルが導入している「コミュニティー・ホスト」という仕組み。宿泊客がやりたいことや知りたいことをホテルに相談すると、自分の関心にぴったり合った島民を紹介してくれる。島の歴史を知りたいといえば歴史に詳しい住民が、ハイキングがしたいと言えば島のトレイルに精通した住民が、写真を撮りたいと言えば島の風景や撮影ポイントを知り尽くした住民が案内人になってくれる。観光アトラクションなど何もないこの島を魅力的にしているのは、住民たちにほかならない。コミュニティーみんなで所有するホテルのおもてなしが、世界の富裕層の心をしっかりとつかんだ。フォーゴアイランド・インは1泊16万円を超える高級ホテルだが、数カ月先まで予約でいっぱいだ。

 「観光の力」によって故郷を再生させた島の人たちは、ホテルのスタッフとして、工芸家や職人として、島の文化や歴史の語り部として、ホストとなりプレーヤーとなった。そして彼らは、400年間島の暮らしを支えてきたタラ漁も取り戻そうとしている。資源状況を見極めながら、魚にダメージを与えないサステナブル(持続可能)な漁法で獲られたフォーゴ産のタラは、ブランド魚として高値で取引されるようになっている。

 都会に出ていった住民も、愛着のある故郷に戻って来れるようになった。島にほれ込んで住み着く移住者も増えている。フォーゴ島が成し遂げた奇跡は、深く傷ついたコミュニティーであっても「観光の力」で復活できることを教えてくれる。

この連載はカナダ観光局の提供で掲載しています。

著者 半藤将代(はんどうまさよ)

早稲田大学第一文学部卒業後、トラベルライターやイベント・コーディネーターとして十数カ国を訪問。その後、アメリカに本社を置くグローバル企業で日本におけるマーケティング・コミュニケーションの責任者を務める。 1999年、カナダ観光局に入局。日本メディアによるカナダ取材の企画やコーディネートに取り組む。2014年には、単なる観光素材の紹介にとどまらない新たなコンテンツ・マーケティングの可能性を開くため、オリジナルコンテンツを満載したウエブサイト「カナダシアター」を開設。カナダの文化や歴史、アートなど、あらゆる分野の読み物や動画を活用して多彩なストーリーを展開した。2015年、カナダ観光局日本地区代表に就任。通年でのカナダ観光の促進や新しいデスティネーションの商品開発を推進。現在は、ニューノーマルにおける新しい観光のあり方を模索している。

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