住民総がかりで観光客をもてなす:フォーゴアイランド・イン

経済成分表

フォーゴアイランド・インの客室のキルトをつくる。島の主婦たちは手仕事の達人だ ©Mark Bennett
フォーゴアイランド・インの客室のキルトをつくる。島の主婦たちは手仕事の達人だ ©Mark Bennett
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 ジータが目指したのは、コミュニティーのための観光だ。フォーゴアイランド・インは、フォーゴ島の復興を目標に掲げた社会的事業として経営され、利益のすべてをコミュニティーに再投資する。ホテルの利益は、島の人々の幸福と健康のために直接使われるのだ。

 その一環で、フォーゴアイランド・インは「エコノミック・ニュートリション」、日本語に訳すと「経済成分表」なるものを宿泊客に開示している。例えば食品や飲み物のパッケージには、カロリーやカルシウムといった栄養成分が表示されている。情報提供を通じて消費者に納得いく選択をしてもらうのが目的だ。この栄養成分表のように、フォーゴアイランド・インの経済成分表には、宿泊料や工芸品などの料金にどのようなコストが含まれており、売り上げがどのように使われるのかが記されている。

 SDGs(持続可能な開発目標)が関心を集めるなか、何かを購入するときに、地球環境や地域社会に貢献できる商品やサービスにお金を使いたいと考える人は多いだろう。しかし一方で、自分が支払ったお金が何に使われるかは、なかなかわからない。フォーゴアイランド・インでは、自分がこの島に来たことで誰の役に立ち、どうコミュニティーに生かされているのかが実感できるのだ。

 アーティスティックなホテルは、「ローカル×グローバル」「伝統×モダン」など、対極のものがクロスするというコンセプトのもとに設計されている。だからホテルの外観はクールだが、館内に一歩足を踏み入れると温かみのある内装や手作りの家具、ラグ、キルトのベッドカバーなどにあふれている。こうしたものはすべて、島の人たちの手によるオリジナルの作品だ。

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