リピーター率8割超

アイランダーは観光客との交流を楽しみ、島の暮らしを分かち合う。©Tourism PEI
アイランダーは観光客との交流を楽しみ、島の暮らしを分かち合う。©Tourism PEI
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 一方、日本が傷つけばアイランダーも力を尽くしてくれる。増田さんは2011年に東日本大震災が起きたとき、日本を思うアイランダーの特別な友情に感動させられたという。震災の発生が報じられるとすぐに、あるアイランダーから「何か日本のために行動したい」と相談を受けた。早速、その友人と1週間後にイベントを主催し、持ち寄った品々のオークションや、手作りのお菓子の販売などで寄付金を募り、みんなで千羽鶴を折った。学生からお年寄りまでたくさんの人が集まった。寄付金は1日で100万円を超えた。

 ここ10年ほどの調査では、世界からPEIを訪れる観光客のリピーター率は8割を超えている。なぜ、またこの島に行きたくなるのか。ある人は「PEIに来ると魔法にかかる」と表現する。アイランダーは、心からこの島が好きで、島の暮らしを誇りに感じている。自分たちが大好きなPEIを観光客にも好きになってほしいと願い、振る舞う。カナダ流のおもてなしは、彼らの地元を大切に思う心から生まれてくる。

「良いところだろ?」「島を楽しんで!」とアイランダーは観光客に声をかける。観光客はその言葉に引き込まれ、いつの間にかPEIが自分にとっても大切な場所だと思えてくる。地元を愛する人たちが暮らす場所は、訪れた観光客にとってうらやましくもあり、自分もその輪に加わりたいと思わせてくれる。島を去る頃には多くの人がそんな「カナダ流のおもてなし」に魅了され、魔法にかかってしまうのだ。

 私たちが生きる世界は時に逆境に見舞われる。コロナ禍によって観光業が受けたダメージは計り知れない。しかし距離が離れていても、観光は互いに助け合う力を生み出してくれる。傷ついた日本や世界の観光地が、観光の力を信じて最初の一歩を踏み出してくれたらと願う。最初の一歩とは、心から自分が暮らす土地を愛し、その「地元愛」を観光客と分かち合うことだ。

この連載はカナダ観光局の提供で掲載しています。

著者 半藤将代(はんどうまさよ)

早稲田大学第一文学部卒業後、トラベルライターやイベント・コーディネーターとして十数カ国を訪問。その後、アメリカに本社を置くグローバル企業で日本におけるマーケティング・コミュニケーションの責任者を務める。 1999年、カナダ観光局に入局。日本メディアによるカナダ取材の企画やコーディネートに取り組む。2014年には、単なる観光素材の紹介にとどまらない新たなコンテンツ・マーケティングの可能性を開くため、オリジナルコンテンツを満載したウエブサイト「カナダシアター」を開設。カナダの文化や歴史、アートなど、あらゆる分野の読み物や動画を活用して多彩なストーリーを展開した。2015年、カナダ観光局日本地区代表に就任。通年でのカナダ観光の促進や新しいデスティネーションの商品開発を推進。現在は、ニューノーマルにおける新しい観光のあり方を模索している。

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