「どうして日本人が来るのか?」

物語の舞台、アンが暮らした家を再現したグリーンゲイブルズハウス。©Tourism PEI / Stephen Harris
物語の舞台、アンが暮らした家を再現したグリーンゲイブルズハウス。©Tourism PEI / Stephen Harris
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 アイランダーは次第に、日本人観光客の目を通して自分たちの島の素晴らしさを強く認識するようになっていった。同時に、いかに『赤毛のアン』が日本人を励まし、影響を与えて来たかも知った。

「日本人観光客が関心を寄せるのは、ウォーターパークや蝋人形ミュージアムのような観光アトラクションではありませんでした。彼らは私たちに、PEIのコアバリュー(最も大事な価値)を思い起こさせてくれたのです」。その頃プリンス・エドワード島州政府観光局でセールス・ディレクターをしていたハービー・ソウラーは当時をこう振り返る。「アイランダーは、日本人が島に深い関心を寄せて来てくれることを誇りに思いました。自分たちの良いところが世界から認められていると感じたのです」

 カナダの東端にあるこの小さな島に、どうして日本人が来るのかと驚いていたアイランダーは、アンのファン、島のファンである日本人と触れ合うことで自分たちの島の良さを再認識するようになり、観光のあり方について深く考え、その姿勢を改めるようになっていった。彼らが行きついたのは、変わらない島の暮らしこそが一番の観光資源という結論だった。

 1997年、アンの家のモデルとなったグリーンゲイブルズハウスで火災が起きた。日本にいる『赤毛のアン』のファンからの寄付のおかげもあって、建物は無事に修復されたが、その修復に当たっては、グリーンゲイブルズハウスがあるキャベンディッシュの姉妹都市、北海道芦別市が大きな役割を果たしていた。

 PEIでガイド会社を経営する増田かつえさんによると、グリーンゲイブルズハウスは1930年代に作られた家屋のため図面などは存在せず、国立公園管理局が管理している史跡にもかかわらず、正確に元に戻せるかどうか心配されたという。ところが、芦別市にあるテーマパーク「カナディアンワールド」には、グリーンゲイブルズハウスとまったく同じサイズのレプリカがあり、建設時に作った設計図が残されていた。芦別市がそれをPEIに提供し、設計図に基づいて火事で傷ついた建物を復元することができたのだ。

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