大都市らしからぬ大都市:バンクーバー

誰もが歩きやすい街

サポート器具を利用して、車椅子でアウトドア・スポーツを楽しむ。©The Disability Foundation
サポート器具を利用して、車椅子でアウトドア・スポーツを楽しむ。©The Disability Foundation
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 バンクーバーは多様な人への配慮も進んでいる。障害のある人が人の助けを借りなくても移動できるよう、歩道はもちろん、スカイトレインも段差がない。観光客に人気のアクアバスも、自転車やベビーカー、車椅子で利用できる。ホテルやレストランには必ず車椅子用のトイレを設置することが条例で定められている。

 それだけではない。シーウォールを歩いていると、車椅子でパドルボードを楽しむ人や、カヤックで通勤する人を見かける。NPOの「The Disability Foundation」は、身体に障害のある人もアウトドア・アクティビティーや旅行などのレジャーを楽しみ、豊かな生活を楽しめるよう支援している。カナダ全土30カ所に合計約300人もの大学生やリタイアした技術者が参加するボランティア組織を運営し、障害に応じたサポート器具を開発して、アクティビティーの可能性を広げているのだ。

 バンクーバーを訪れる観光客は2009年の811万人から2018年までの10年間で33%増え、1076万人にまで達した。観光客が増加しても、暮らしの妨げとなるオーバーツーリズムや観光公害が引き起こされることはない。バンクーバー観光局は「コミュニティーこそがメインの観光素材だ」という考えに基づき、そのKPI(重要業績評価指標)に従来の観光客数や収益に加え、観光に対する住民の満足度と、観光事業者のサステナビリティー対策の成果を取り入れている。キャパシティーを超える兆候が見られれば、直ちに対策を講じる。

 住民が幸せだと思える街は、観光客にとっても魅力的であり、観光によってもたらさせる恩恵が街をますますよくするという好循環を生んだ。バンクーバーが目指す「幸せな暮らし」と「観光」の調和は、SDGs(持続可能な開発目標)の理想そのものといっていい。

この連載はカナダ観光局の提供で掲載しています。

著者 半藤将代(はんどうまさよ)

早稲田大学第一文学部卒業後、トラベルライターやイベント・コーディネーターとして十数カ国を訪問。その後、アメリカに本社を置くグローバル企業で日本におけるマーケティング・コミュニケーションの責任者を務める。 1999年、カナダ観光局に入局。日本メディアによるカナダ取材の企画やコーディネートに取り組む。2014年には、単なる観光素材の紹介にとどまらない新たなコンテンツ・マーケティングの可能性を開くため、オリジナルコンテンツを満載したウエブサイト「カナダシアター」を開設。カナダの文化や歴史、アートなど、あらゆる分野の読み物や動画を活用して多彩なストーリーを展開した。2015年、カナダ観光局日本地区代表に就任。通年でのカナダ観光の促進や新しいデスティネーションの商品開発を推進。現在は、ニューノーマルにおける新しい観光のあり方を模索している。

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