極北のサファリ:チャーチル

行動変容を促す

ツアーでは極北地方の生態系や気候変動問題について話し合う ©Jessica Burtnick
ツアーでは極北地方の生態系や気候変動問題について話し合う ©Jessica Burtnick
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 野生のホッキョクグマに魅了され、オーロラの下でロマンチックなディナーを楽しむ一方で、観光客はホッキョクグマが直面する苦難に胸を痛め、何とかしなければという思いを強くする。北の王者ホッキョクグマへの憧れと現実とのジレンマや危機感によって、世界の見方が変わり、目の前の風景が全く違う意味をもつようになるのだ。

 ツンドラ・バギーのツアーでは、観光客がグループディスカッションやポーラーベア・インターナショナルでの教育プログラムに参加する。「ツンドラ・バギーは極北地方の生態系について考え、問題意識を共有する大切な意見交換の場なのです」とガンターは言う。

 より多くの人がホッキョクグマに感情移入してくれたら、危機にあるその動物を救うため行動を起こそうという動きが高まるにちがいない。自然の中で野生動物を見ることは、インターネット上の写真で見るのとはまったく違う思いを抱かせてくれる。観光客は旅行を終えて日常に戻ってからも、引き続き温室効果ガス削減のためにできることを学び続け、周囲の人々にも行動変容を促してくれるかもしれない。気候変動とホッキョクグマ保全に正面から向き合う極北の町チャーチルの取り組みは、観光の力が世界を変えていく可能性を感じさせる。

この連載はカナダ観光局の提供で掲載しています。

著者 半藤将代(はんどうまさよ)

早稲田大学第一文学部卒業後、トラベルライターやイベント・コーディネーターとして十数カ国を訪問。その後、アメリカに本社を置くグローバル企業で日本におけるマーケティング・コミュニケーションの責任者を務める。 1999年、カナダ観光局に入局。日本メディアによるカナダ取材の企画やコーディネートに取り組む。2014年には、単なる観光素材の紹介にとどまらない新たなコンテンツ・マーケティングの可能性を開くため、オリジナルコンテンツを満載したウエブサイト「カナダシアター」を開設。カナダの文化や歴史、アートなど、あらゆる分野の読み物や動画を活用して多彩なストーリーを展開した。2015年、カナダ観光局日本地区代表に就任。通年でのカナダ観光の促進や新しいデスティネーションの商品開発を推進。現在は、ニューノーマルにおける新しい観光のあり方を模索している。

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