極北のサファリ:チャーチル

最大の問題に直面

ツンドラ・バギーで野生のホッキョクグマを間近で観察する ©Jessica Burtnick
ツンドラ・バギーで野生のホッキョクグマを間近で観察する ©Jessica Burtnick
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 しかし今、チャーチルのホッキョクグマ観光は最大の課題に直面している。気候変動によってハドソン湾の氷が年々早く溶けるようになり、ホッキョクグマの生存が危うくなっているのだ。ホッキョクグマは食料の9割をワモンアザラシに頼っているが、海を泳ぐアザラシを捕らえることはできない。凍った海の氷の割れ目から息継ぎのために顔を出したアザラシを捕らえて食べている。だからホッキョクグマがアザラシを食べられるのはハドソン湾が凍っている間だけ。春を迎えて氷が溶けたあとは何カ月もの間、ほぼ絶食状態に陥る。温暖化で北極圏の冬は短くなり、絶食状態におかれる期間がどんどん長くなっている。痩せて健康状態は悪くなり、命を落とすホッキョクグマもいる。繁殖も困難だ。気候変動を早急に改善しない限り、ホッキョクグマは絶滅してしまうだろうと環境保護団体は訴えている。

 氷海とホッキョクグマを守ることを目指す環境保護団体「ポーラーベア・インターナショナル」は10年前からチャーチルに拠点を置き、意欲的な保護活動を展開してきた。チャーチルを訪れる観光客にもホッキョクグマと気候変動、そして人類に緊急に求められる行動変容について教育を行っている。ツンドラ・バギーのツアーを運営する「フロンティアーズ・ノース・アドベンチャーズ」やロッジを拠点にホッキョクグマの観察ツアーを主催する「チャーチル・ワイルド」などの旅行事業者も同様のメッセージを発信し、観光客が環境問題について考え、話し合う場を提供している。

 というのも、実はポーラーベア・インターナショナルは、30年ほど前にホッキョクグマを見にチャーチルを訪れたビジネスマンのグループによって創立されたものだ。フロンティアーズ・ノース・アドベンチャーズ社長 兼CEOのジョン・ガンターは言う。「観光に携わる私たちの目的は、観光客がホッキョクグマとチャーチルの支援者となって、気候変動問題に取り組み続けてくれることです」

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